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イラコン11

WorkingHoliday
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 SS蒼の予想曲
  表紙
  1ページ目
  2ページ目
  3ページ目
  4ページ目
  5ページ目
  6ページ目

 作者さん紹介
  
 杜亜希さん
  SSやイラストなどが中心。
  オリジナルSSやBLなど。

 登場人物
  
  夢月 愛沙
   今回の主人公。
  夢月愛珠と双子の妹。
  金髪少女でおしとやか


 
  銀月 千草(夜っち)
   昼と夜で性格や外観が
  違う男の子。



 
  夢月 愛珠
  夢月愛珠と双子の姉。
  ピンクの髪で元気いっぱい。


 ・銀月 梨菜
   銀月家の長女。千草の姉。

前ページ

売り場は、熱気に溢れている。
閉まる時間がもうすぐだからか、ワゴンに並べられた
商品の多くに 「値引き」と書かれた札が目立つ。
愛沙はそのひとつひとつを見るようにしていたが、
急に思い立ったように人混みの中
に駆けていく。
「ちょ…」
勝手な、やつだな、とは思う。
人をここまで引っ張ってきて、何を買うのかと思ったら、ケーキ。
ケーキなんて何にするんだよ…。
っていうか、普通にこんなに遅くに…必要なもんなのか?
思いながら人混みをかき分け、何とか、金髪を見付ける。
少女はしゃがんでいた。
瓶に詰められた、綺麗な木の実の前で。
蒼の目は興味深げにそれを見ている。
きらきらと、きらめいた瞳で。
…こうしてみると、愛沙って結構美人だよな…
千草もしゃがみこんだ。そうして愛沙の横顔を眺めた。
まつげは長い。白い肌に扇形の影を落として。
ぷっくりと突き出た唇は薄紅色、頬も、ほんのりと赤くて。
…ま、姉貴には敵わねぇけど。
「…決まったか?」
聞くと、愛沙はびくりとして顔を上げた。
目を…大きな眼を更に大きく見開いて、それから笑った。
「うん」
…どきり、とした。
「あ、そ、そっか」
慌てて視線を逸らす。何、ドキドキしてるんだか…。
「おじさーん、これお願いします」
可愛い声が響いて。
ただ、何故かひどく落ち着かなくて。

結局、アメジストにも似た、ブルーベリーが彼女の胸に納まった。

「ちょっと、待っててね」
そう言うと、また人混みの中へ駆けていく。
千草の胸に、ブルーベリーの袋を押しつけたままで。
彼の胸に、苦みを残したままで。
…何、考えているんだか。

外のベンチに座って、しばらく。
愛沙は帰ってきた。両手にいっぱいの荷物を抱えて。
よくもこんだけ、かき集めたな、と思う。
茶色の袋には、それぞれ、こぼれそうなほどのものが入っている。
突き出したシナモンスティック。チョコレートと思しきカラフルな袋。
端から見えるゼリービーンズの煌めき。
それと同じ、煌めきを宿した目を、愛沙は笑わせた。
お待たせ、と満面の笑顔で。
「あ、あぁ」
千草は立ち上がった。
「待ったでしょ…、ごめんね、寒いのに」
「いや、別に」
態度は何故かつっけんどんになってしまう。
素っ気ない言葉に、愛沙はきょとんとした…否、
きょとんとしたように千草には見えた。
…あ。
「待ってなんか、ねぇよ。大丈夫」
…俺、何やってんだろ。
でも愛沙はまったく気にする様子もなく、千草の隣に腰掛けた。
微妙に開いた2人の隙間には、荷物がどんと陣取った。
そのまま、2人して黙り込む。
何か話さなきゃと思い口を開いても、出てくるのは何故かため息ばかり。
隣を見るのも、何だか、わざとらしいような気がして。
そうしてしばらくの沈黙の後、口を開いたのは…愛沙だった。
「あの、あのね、今日は有り難う」
「…ん、いや」
「ちーちゃんのおかげでね、何とかなりそう。本当に有り難う」
「あ、うん…」
おそらくこちらを見ているであろう視線は感じる。あの満面の笑顔で、
笑っているであろうことは容易に想像が付く。
でも振り向くことは出来ない…
振り向いたらきっと、また、変に胸が騒ぐ。
何、意識してんだろ…。
おかしいとは思いながらも、どうすることも、出来なくて。

「…」
「…」
お互いはまた、黙り込んで。
その耳に、凛と冷えた空気に、かすかに響く『蛍の光』。
「あっ」
その音と同時に、愛沙は立ち上がって。
その途端、脇に置いてあった袋が、道路にこぼれて。
「あっ…」
煉瓦造りの道を、いろんなものが、ころころと転がっていく。
愛沙はそれらを追いかけて、慌てて拾い集めた。
千草も、ため息を付いて、それを手伝う。
それにしても何でこんなに、とぼやきながら。
そして、最後のひとつを拾おうとした手が、
「あ!」
「!」
触れた。
吃驚と手を引っ込めたのは、愛沙。
そのまま、呆然とする千草。
「…ご、ごめんなさい、ど、どうぞ…」
「あ、あぁ…」
どうぞって言われても、どうしろって…
戸惑った視線に気付いたのか、愛沙はまた、慌てた。
あっ、あっ、ご、ごめんなさいごめんなさい。
慌てて、拾って、慌てて、袋の中に入れて。
「か、帰ろうか、愛珠ちゃん、もう帰ってるかも、しれないから」
「あ、あぁ、そうだな…」
ふぃと向こうを向いた、愛沙の頬は、
真っ赤だった…、ように、見えた。

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